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トリプルネガティブ乳癌への画期的な新薬の紹介

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乳癌、特に若年の悪性度の高い抗癌剤抵抗性のトリプルネガティブ乳癌《2種の性ホルモン受容体陰性およびヒト上皮成長促進因子受容体(HER2)陰性の3つの陰性を乳癌の組織検査で確定した乳癌患者群をさす》は世界中の乳癌治療の中でも非常に困難をきたしているのが現状である。

最近、アメリカで2018年1月12日アメリカメルク社から経口薬オラパリブが承認された。そのほかブリストル・マイヤーズ社も同様のルカパリブの早期承認をまっている。これらの経口薬は、PARP剤と呼ばれており癌遺伝子の修復を阻害する働きをもつ。癌細胞も我々の正常な臓器の細胞も絶えず新陳代謝を繰り返している。細胞分裂の過程においてDNA(遺伝子)の変異は蓄積されてゆく。しかし、一方で正常ではないDNAの変異を元の正常な形に戻そうとするDNA修復も備わっている。この修復経路には、①ワンステップ修復 ②塩基除去修復 ③ヌクレオチド修復 ④ミスマッチDNA修復 ⑤相同組み換え修復の5つがある。

PARP剤は、上記の5つの経路のうち②の塩基除去修復を妨害する働きを行う。癌細胞は、常に正常細胞よりも活発にDNAの変異を重ねて成長していくので、5つの経路のうち1つの経路を妨害されても治療薬として癌細胞を壊死させることは難しい。しかし、遺伝的に乳癌・卵巣癌、一部の悪性度の高い前立腺癌の患者さんにおいてはDNAの修復に関する遺伝子経路のうち遺伝的あるいは突発的に癌が家系的に発症することがよく知られている。遺伝的乳癌あるいは卵巣癌においては、BRCA1、BRCA2はもっともよくしられた遺伝子変異でありこのタンパク質に障害をもって生まれると家系的に乳癌・あるいは卵巣癌が多発する。発症する乳癌は、ほとんどが両側性でトリプルネガティブ乳癌である。有名なアメリカの女優もその遺伝子障害を持っていたため予防的に両側乳房切除術をおこなったことは記憶に新しい。BRCA1とBRCA2は、前述したDNAの修復経路のうちの⑤の相同組み換えに関与しており、うまくこの修復ができない状態になっている。ここで、患者さんにDNAの修復の中の②の塩基除去修復を阻害するオラパリブを投与するとDNAの修復経路の5つのうち2つの経路が障害を受けるため、癌の成長増殖が著しく影響を受ける。トリプルネガティブの乳癌の患者さんの治療法として画期的な成果を今回あげることができたのでアメリカFDAが承認した。一部の前立腺癌あるいは卵巣癌を含めた他の治療困難な癌への応用、単独投与あるいは併用投与としてこれから脚光を浴びると思われる。

トリプルネガティブ乳癌はアメリカでは155000人の女性が進行転移で生命を危機にさらされている。そういった女性にとっては、単独投与で完全治癒も治験の結果でているほどの新薬となっている。

2018年1月16日 光畑直喜

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