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免疫チェックポイント薬の最新情報

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最近話題になったノーベル賞の本所佑京都大学名誉教授は、オブジーボ(商品名 一般名ニボルマブ)の元になる免疫細胞の表面にPD-1(のちに命名)があることを20数年前に発見していたが、癌の治療に応用出来るとは当時ご本人も含めて分かっていなかった。その研究をついだ研究室の優れた免疫学者グループによって癌の応用が考えられたが、当時日本の薬品メーカーは全く興味を示さず最後に出てきた小野薬品もこの応用技術がアメリカに流出する直前になって本気でとりくむようになった。免疫細胞の表面にあるPD-1抗体と、癌細胞の表面に出している目印であるPDL-1との間でおこる癌細胞攻撃するメカニズムを解明し臨床応用したものである。わかりやすく言えば、本来なら敵である癌細胞に対し、我々の身体は自らの免疫細胞に、癌を攻撃してもらわないと困るわけであるが、PD-1とPDL-1が結合してしまうと、アルコールでも飲まされた如く、癌への攻撃を止めてしまう状態になる。その結合を阻止する抗PD-1薬が世に登場した。わかりやすく言えば、癌細胞はこの結合を通じて免疫細胞を麻痺させ、癌細胞も我々の身体の正常細胞と同じく、味方であると勘違いさせるメカニズムを断ち切ることによって本来の働きである異物としての癌細胞を攻撃すると、当時は考えられてノーベル賞受賞の理由とされてきたが、現在では癌細胞と免疫細胞の取り巻く環境は、まだまだ複雑怪奇で世界中で研究の入り口にたったに過ぎない。しかし、臨床面ではPD―1系が世界で2種類ニボルマブ (商品名オブジーボ)とペンブロリズマブ(商品名 キートルーダー)抗PDL-1として3種類 すなわち アテゾリツマブ・アベルマブ・デユルバルマブ の5つがでており、作用機序の異なる免疫チェックポイント薬として、もう一つ別に抗CTLA-4(商品名ヤーボイ)がある。先ほどの癌に効くメカニズムには矛盾点がどんどん出てきている。すなわち、癌細胞がもつPDL-1の数が多いほうが効くのはある程度認知されているがPDL-1をもたない患者さんにも効く理由の説明、あるいは癌細胞が持つとされるPDL-1を直接標的とする上記3つの抗PDL-1薬も、全くPDL-1を出していない癌患者さんにも効く説明が、現時点でも解明されていない。厚労省・学会もしきりにこれらの免疫チェックポイント薬は高価で、効く患者さんの率もせいぜい20%前後とされているため、80%が税金の無駄使いとされているが、肝心のどういった人が効くかの選別基準が世界中で研究追求されている。難しい言葉であるが、前もって保険に認可されている癌腫でもあらかじめ免疫チェックポイントが効く患者さんを選び出す時に役立つ目印をバイオマーカーと呼ぶようになった。悪性黒色腫(ほくろの癌)と肺癌については、未だに癌細胞のPDL-1を多くもつ患者さんを効きやすいとして選択しているが、頭頚部癌・胃癌・尿路癌・腎癌・肝癌などは既にPDL-1の多少にかかわらず、どちらの群も一定の比率で効いている。現在では、手術で摘出した癌組織、あるいは患者さんの血液から新しいバイオマーカーとして癌細胞の突然遺伝子変異(TMB)の率を算定してバイオマーカーとしており、また遺伝子変異としてマイクロサテライト不安定(MSI)あるいは、DNA修復の遺伝子変異、たとえば乳癌・卵巣癌・前立腺癌の患者さんの家族性癌によく見られる、BRCA1・BRCA2の遺伝子変異の検出が第2世代の選別検査として欧米では重要視されている。しかし、日本は韓国・中国・台湾よりも更に後進国でありTMB MSI BRCAを含めて全国の医療施設は米国に患者さんの検体を輸送して高い検査代となっている。いわゆる癌免疫遺伝学は諸外国に比べて我が国は大変な遅れをとっていることさえ国民は知らされず、未だに胃癌1つの治療とっても日本はまだ最先端の癌治療国であると勘違いしている。

癌の遺伝子変異は、メラノーマ・肺扁平上皮癌・肺腺癌・尿路癌・肺小細胞癌・食道癌・大腸癌・腎癌の順に多いと言われており(2013年ネイチャー)、一般にはこの順に免疫チェックポイントが効きやすいと考えられるが、大腸癌・子宮体部癌などの癌であっても、その患者さん個人個人で遺伝子変異率が大いに異なる。従って、免疫チェックポイントが効きにくいとされる大腸癌・乳癌であっても遺伝子変異が多ければこの薬に期待が持てる。事実欧米の大腸癌でもMSIをもつ患者さんには保険適応している。肝臓癌・食道癌・古典的ボジキン悪性リンパ腫もすでに保険適応、あるいは適応間近であるが、膵臓癌でさえDNA遺伝子変異が認められる患者さんに限って、アメリカはごく最近免疫チェックポイント+PRPP剤(内服薬)の例外的使用を許可している。当方では、内閣府癌プレシジョン医療プロジェクト(2018年全世界公募)のプロジェクトマネージャーに就任した中村祐輔(元内閣府参与・東大名誉教授・シカゴ大学名誉教授)の帰国をうけて癌免疫薬理遺伝学の医療現場への普及・個別化医療の推進を目指してこれからの5年間で約120億円を投じてこの分野の遅れを取り戻すべく体制を整えている。当方では、米国へ検査を依頼していた遺伝子変異、特にTMB MSI BRCA等を国内のバイオマーカー・遺伝子解析会社と協同して、バイオマーカーの検査を国内で受けられるように準備中である。

来年早々から開始予定。

各種癌のご相談があればお気軽にご質問・ご相談してください。

2018年12月3日 癌相談医・腎移植医 光畑直喜

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