頭痛、めまい、シビレ、いびき、日中の眠気 – 福山市明神町 明神館クリニック

不眠症

私の不眠治療 

大田浩右

不眠は脳が学習して作られる

眠れないことへの不安、心の緊張や苦痛を繰り返していると、不安や苦痛を脳が学習し不眠症が形作られていきます。
不眠治療は健康の要であり記憶力と深い関係にあります。不眠の病態は複雑なため、いわゆる睡眠薬による単純治療は不適切です。認知機能に悪影響を及ぼすと問題になっているBZ薬とZ薬の作用は鎮静です。私は依存性、抗コリン作用が少なく、睡眠を深くする鎮静作用をもつ抗てんかん薬、鎮静系抗うつ薬を中心に不眠治療を行っています。私の日常診療の要である大田メソッドを紹介します。

※ 60歳の還暦を過ぎ、もの忘れが気になる方への処方は慎重に行います。念のため処方前に物覚えテストを受けていただく場合もあります。

 


不眠治療に私があみ出した治療薬とは
 

・睡眠の役目 寝なきゃ 損ばかり

睡眠は脳活動でたまったゴミ(βアミロイド、タウ)の洗浄です。そして記憶の増強(LTP)と不要な記憶の消去(LTD)です。重くなったパソコンから不要なデータを消去すると動きが速くなります。脳も不要な記憶を消去することによって認知機能(記憶力)が良くなります。脳のゴミ掃除と記憶の整理整頓をしてくれる睡眠は認知機能と情緒の改善に貢献しています。

・メラトニンは基礎睡眠に有効です

夜間に脳松果体から分泌される睡眠ホルモンです。加齢と共に睡眠の質が悪くなるのはメラトニンの分泌が減少するからです。若い人でも遅寝をしているとメラトニンの分泌が減少します。治療薬とメラトニンの併用は効果的です。

・睡眠薬の副作用に注目が集まる

2015高齢者の安全な薬物治療ガイドラインではGABAα1受容体に作用し睡眠効果を発揮するベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZ系)、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(非BZ系)はともに副作用として認知機能低下が指摘されています。

・不眠 →認知機能を下げる  → ではどうする!?
 睡眠薬 →認知機能を下げる → ではどうする!?

認知機能を落とさず睡眠を深くする不眠の治療大田メソッドについて順次説明していきます。

軽症不眠の治療

薬の前に
⇒生活習慣、睡眠環境の改善
不眠の原因となる病気の治療
うつ、イビキ無呼吸、ムズムズ脚、レム睡眠行動障害、肩こり、頭痛、めまい、頻尿、腰痛、寝る前のスマホ・飲酒など
睡眠サプリメント
プロスタグランジンは痛みを教え、体温中枢を設定し、睡眠を誘発するホルモンアデノシンA2A受容体を刺激する物質が見つかれば不眠症の治療に革命が起きます。アデノシン擬似薬が続々と登場しました。
メラトニン

メラトニンは脳の松果体から分泌される抗酸化作用を持つ睡眠関連ホルモンです。メラトニンは成長ホルモンと協力して脳と体の疲労回復を図ります。メラトニンは予定就寝時刻の少し前に服用、効果発現に2週間程度を要する場合があります。

難治性不眠症への取り組み

 

 

 

バルプロ酸ナトリウム デパケン、セレニカR
GABAトランスアミナーゼ阻害作用によりGABA濃度を上昇、またドパミン濃度も上昇させ脳内抑制系を活性させ鎮痛・鎮静作用を発揮します。不機嫌易怒症に対する気分安定化作用、てんかん、片頭痛の特効薬として知られています。神経内科、心療内科、精神科、ペインクリニック領域において世界的に広く処方されています。私は不眠治療の主剤として使っています。

 

・プロプラノロール インデラル
1966年Rabkinが片頭痛への有効性を発見、高血圧、頻拍性不整脈に対する効果、抗不安作用など循環器、神経内科、心療内科等で幅広く使用されています。交感神経β受容体に対する抑制作用は強く、自律神経の興奮、イライラを鎮静し調整します。

・リスペリドン リスパダール
・クエチアピン 
セロクエル
保険適応は小児自閉症と統合失調症ですが、保険適応外処方の多い薬です。睡眠を深める作用もあり、他剤との相互作用も少ないので、少量処方なら難治性の異痛症、睡眠障害などに有効です。リスペリドン、クエチアピンは気分安定作用を有する薬です。本来なら気分安定化薬に分類されるべきですが、日本では抗精神病薬に分類された不都合な歴史を持っています。リスペリドンはドパミン作動性D2受容体への結合親和性よりもセロトニン作動性5-HT2a受容体に対し10~20倍高い親和性を持っており、思考安定し気分障害を改善します。もう一つの作用は、橋青斑核A6神経にあるα2a受容体に作用し交感神経を鎮静化します。また、興奮覚醒に作用するノルアドレナリンを抑制し安定した鎮静睡眠作用を発揮します。

・ミアンセリン テトラミド
アミトリプチリン(トリプタノール)に7員環を加えることにより抗アセチルコリン作用をほとんどなくした薬です。副作用の眠気は抗ヒスタミン作用のため健在です。最近はミアンセリンの炭素を窒素に置換したミルタザピンに注目が集まっています。影響の出にくいところを少し変えて新しい薬をつくるとは…創薬は面白いです。

・ミルタザピン リフレックス 
神経伝達物質ノルアドレナリン、セロトニンを増やし気分を和らげ、不安、イライラを抑えるため不眠を改善し、抗コリン作用がなく睡眠の質を改善する作用が強いです。また、抗ヒスタミン作用により睡眠を深くします。

・アミトリプチリン トリプタノール
最初はうつへの薬効が発見されました。この薬はてんかん、三叉神経痛の特効薬であるテグレトールと構造式が近似しています。脳内ホルモンであるノルアドレナリン・セロトニンを増やすことにより、脳幹中脳から脊髄後角に至る下降性疼痛抑制系を賦活化させ、強い鎮痛・鎮静作用を発揮します。片頭痛、睡眠障害、夜間頻尿などを持つ睡眠障害に効果を発揮します。鎮痛効果はリリカ・トラムセットより強く、癌性疼痛に使用されます。夜尿症にも使われます。

・クロナゼパム ランドセン、リボトリール
世界的に例外的に、毎年高い使用頻度で、幅広い診療科で最も多く処方される薬です。(exceptionally high use as millions of prescriptions)
リボトリールはGABAの神経抑制作用を増強することで抗けいれん、筋弛緩、鎮静、抗不安作用を発揮します。臨床上はミオクロニー発作、欠神発作、パニック発作、片頭痛発作、ムズムズ脚症候群、さらに扁桃核から大脳辺縁系の鎮静化作用により恐怖、悪夢、レム睡眠行動障害に効果を発揮します。

 

  • 鎮静作用:バルプロ酸ナトリウム(デパケン)、ミアンセリン、トラゾドン、クロナゼパム(ランドセン、リボトリール)は脳の抑制系を賦活し気分安定化作用、鎮静化作用を発揮し睡眠を誘発します。
  • グリンファティックシステム:現在脳科学でホットな話題のグリンファティックシステムの中心的なホルモンはノルアドレナリンです。抗ノルアドレナリン作用を持つプロプラノロール(インデラル)は抗不安作用と共に脳間質液の流れを良くし洗浄機能を高め良質な睡眠につながると期待されます。
  • セロトニン・ドパミン拮抗薬:セロトニンはノルアドレナリンと共に睡眠覚醒リズムに関与し睡眠中は減弱ないし消失します。セロトニンはさらにドパミンを制御していると考えられており、セロトニン・ドパミン阻害薬(リスペリドン)による気分安定化および鎮静化作用は深い睡眠を誘発します。

私の睡眠薬処方は原則粉薬です。
粉薬なので自分に合った適量に自己調整をお願いしています。
粉薬の中身と量は経過とともに漸減していきます。
最終的にはサプリメント的な微量とします。

薬の副作用チェックのため年2回の採血をお願いしています。
まれな副作用として肝機能障害をみることがありますので、内服1~2ヶ月後に採血でチェックします。

もう一つまれな副作用として多夢悪夢を起こすのはプロプラノロール(インデラル)です。悪夢を訴える場合はインデラルを休薬します。

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<参考資料>

※60歳以上の高齢者の中には物覚えテストなど認知機能検査を受けていただいた上で処方するケースもあります。いずれにしても、不眠による精神的、肉体的損失を防ぐために、不眠の害と薬の害の折り合う処方が大切です。

※不眠の意外な原因
胃酸を下げる薬、コレステロールを下げる薬を長期にわたって漫然と内服しておられる方の中に、これらの薬を止めていただくだけで不眠の改善が見られる場合があります。

※私が少量リスペリドンを使う理由
ドパミン/アセチルコリン、ドパミン/セロトニンは、拮抗するシーソー関係にあります。セロトニン・ドパミン拮抗薬の脳内ホルモン相互作用については未解決な部分もありますが、かなりの部分で明らかになってきました。私が注目するのは、少量のSDA、リスペリドンの処方はデメリット副作用よりもメリット薬効が勝るからです。
リスペリドンの注目すべき4点の薬効は、
①強い5HT-2A遮断作用、中等度のα2A遮断作用、軽度のD2遮断作用があり、このバランスにより副作用である錐体外路症状を軽減します。
②D3遮断作用により帯状回ドパミン放出が促進され、D2受容体を活性化し意欲を回復します。
③5HT-2A遮断作用は前頭葉の認知と運動機能に関わる側坐核D1を活性化し、認知障害を改善します。
④α2遮断作用は前頭葉におけるノルアドレナリン神経の働きを高め、前頭葉機能を適切化し、認知とうつを改善します。

SDAは睡眠を深くする作用があります。また、リスペリドンは抗α1作用による鎮静化作用があります。クエチアピン(セロクエル)は、リスペリドンとほぼ同様の作用と効果を持っていますが、SDAよりも多くの受容体に適度に作用する多元受容体標的化向精神薬(MARTA)に分類されます。リスペリドンに比べて鎮静作用や催眠作用が強く、肥満を来しやすい副作用があり、糖尿病には禁忌という使いにくさがあります。ミルタザピン(リフレックス)は、ドパミン作用がないだけで、リスペリドンに作用がよく似ており、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)に分類されますが、抗ヒスタミン作用が強く、眠りに入りやすくしたり深い眠りの時間を増やしたりして睡眠の質を高める効果があります。しかし、クエチアピン同様、体重増加が問題になります。そのため、これらは少量をより意識して処方します。アリピプラゾール、エビリファイはドパミン量を調節する作用があるドパミン・システム・スタビライザー(DSS)と呼ばれ、精神科ではよく使用される副作用の少ない薬ですが、少量処方では効果を実感しにくいため、脳過敏症の治療ではほとんど使用しません。精神科でないため、効果を実感するほどの増量には抵抗があります。少量処方で一番使いやすい精神科薬はリスペリドン、次に使いやすいのがクエチアピンとミルタザピンです。いずれも精神科で処方される用量に比べて相当に少ない量です。

※睡眠薬
ベンゾジアゼピン系:ハルシオン、レンドルミン、エバミール/ロラメット、デパス、リスミー、サイレース/ロヒプノール、ユーロジン、ベンザリン、リボトリール
非ベンゾジアゼピン系:マイスリー、アモバン、ルネスタ

※認知機能に影響しないと考えられている睡眠作用を持つ薬剤
・メラトニン受容体作動薬:ロゼレム 自然な眠気を強める薬
・オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ 自然な眠気を強める薬

※新世代睡眠薬ベルソムラ、ロゼレム
覚醒ホルモンオレキシンの受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ錠10㎎、15mg、20㎎)とメラトニン受容体に作用するラメルテオン(ロゼレム錠8㎎)があります。ベルソムラはまれに入眠時の異常な悪夢、幻覚を見ることがあります。ただし、ベルソムラもロゼレムも併用注意や併用禁忌の薬剤があります。
なお、従来型の睡眠薬ゾピクロン(アモバン)を光学分割して得られたエスゾピクロン(ルネスタ錠1㎎、2㎎、3㎎)は低力価に抑えられているため副作用の発現リスクは低く、半減期5.7時間、高齢者は若干延長し8時間強のため、睡眠作用は弱いですが使いやすいです。

※俗に言う抗うつ薬

症状 種類・作用機序 薬品名
抑うつ 三環系 アミトリプチリン(トリプタノール)
ノリトリプチリン(ノリトレン)
四環系・異環系 ミアンセリン(テトラミド)
トラゾドン(レスリン)
SSRI フルボキサミン(ルボックス)
パロキセチン(パキシル)
セルトラリン(レスリン)
エスシタロプラム(レクサプロ)
SNRI ミルナシプラン(トレドミン)
デュロキセチン(サインバルタ)
NaSSA ミルタザピン(リフレックス)
焦燥・興奮 気分安定化薬
抗精神病薬
バルプロ酸(デパケン・セレニカ)
カルバマゼピン(テグレトール)
炭酸リチウム(リーマス)
リスペリドン(リスパダ-ル)
クエチアピン(セロクエル)
アリピプラゾール(エビリファイ)

 

GABAを増やすバルプロ酸(デパケン、セレニカなど)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRIセルトラリン(ジェイゾロフト)は鎮静作用はありますが、睡眠作用は弱い。同じくセロトニン再取り込み阻害作用とノルアドレナリン再取り込み阻害作用を持つミルタザピン(リフレックス)は不安を軽減し脳を鎮静、睡眠因子として作用します。ただし、抗ヒスタミン作用が強いため高齢者へは慎重処方。うつ治療薬デュロキセチン(サインバルタ)とミルタザピン(リフレックス)を併用するカリフォルニアロケット療法は有名ですが高齢者には不適。
非定型抗精神病薬リスペリドンは睡眠効果を持つ魅力的な薬です。抗アセチルコリン作用、抗ヒスタミン作用を持ち高齢者には不向き。副作用の少ないアリピプラゾール(エビリファイ)は高齢者にも使用できますが睡眠への作用は弱い。クエチアピン(セロクエル)は睡眠に対する安定した効果を持っています。いずれにしても高齢者には少量処方が原則です。

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