不登校の女子中学生(米国の例)
Mayo Clinic:ケイティ(中学生女子)、ケイティの母親、フィリップ先生、リーさん、フィッシャー先生
ケイティ:私はチアガールをしているけどチアの練習に全く行けなくなりました。競技会にも参加していません。この2年あまりで学校を100日休みました。朝目覚めても今日は何かできるという気がしなくて、ただベッドに横になっているしかないんです。学校に行った日は一日過ごすのが大変でした。
母親:ケイティは立ち上がるとめまいがしていつも失神していました。失神するときは脂汗をかいて脈がとても速くなります。
ケイティ:体の中は病気なのに見た目は問題ないので、私のかかりつけ医は私のことを歩ける臆病者と言いました。
母親:ケイティはうつか何かだと多くの人が私にプレッシャーをかけました。私は懸命に娘を助けてくれるところを探してMayo Clinicのフィリップ先生のチームにたどり着きました。
フィリップ先生:ケイティはPOTSという体位性頻脈症候群です。これは不随自律神経系に問題があって血液の流れをうまくコントロールできなくなっている状態です。患者にとっては悲惨です。POTSの診断は複雑です。検査し明らかな手がかりを探します。横になった姿勢から起き上がったときに突然猛烈に速い脈になったら脳に十分な血液を送ることができなくなりめまいが起きます。立ち上がった時に起きる頻脈とめまいは診断のカギになります。この病気の問題は医師も含めて多くの人がこの病気の存在を知らないし理解していないことです。POTSは1990年代になって認識されましたが、南北戦争で勇退した若い兵士がめまいと失神の問題を抱え除隊になりました。この若い兵士の症状は南北戦争症候群と名付けられました。当時は軍隊の言うことが不安で恐怖なので恐怖病とも言われました。振り返ってみると、南北戦争症候群、恐怖病は慢性疲労、めまい、吐き気などPOTSにとてもよく似ているのです。
リーさん:私は病院と患者さんの間に立つPOTSの啓発活動をするメディア部長です。ケイティの母親のようにインターネットでMayo Clinicのビデオを見た人が連絡してこられフィッシャー先生を紹介します。
フィッシャー先生:起立性調節障害POTSの回復には時間がかかります。何年もかかることがあります。治療は血管を強化するためにたくさんの水分を摂ること、塩分を摂ること、いくらかの薬と運動です。周囲の支援があればPOTSの子供のほとんどは良くなります。
ケイティ:時間は経ったけど私は元気になりました。以前は私の症状が私の人生を走らせていたけど、今は私が私の人生というバスを走らせています。
注:なお不登校の定義は国によって違うようです。日本では年間30日休むと不登校となります。
注:Mayo clinicは起立性調節障害の治療成績が良いことで有名です。ただし、受診の前にフィッシャーさんという調整役がおり重症例は受け付けないようです。治る可能性のある症例を選んでおり、有名病院とはいえ治療成績を上げるためのたくましい商魂が透けて見えます。また、ダラスのPOTS治療センターと提携しています。
<参考>テキサス州ダラスにPOTS治療センターがあります。治療メニューは個々の子供に向いた治療プログラムを立てるようです。第一プログラムは薬物治療というよりはスポーツクリニック、またはスポーツクラブのような感じです。もちろん、体を鍛える以上にいくつかのストレス対処理論や認知行動療法などのセラピーを含めてプログラムされているようです。内容を見るとオンライン相談、専門家の助言、自律神経バランストレーニング、栄養指導、睡眠の最適化、身体的ストレスマネジメント、起立耐性トレーニング、コーピングスキル、カウンセリング、生活習慣マネジメント、リラクゼーショントレーニング、運動プロトコール、長期間の改善モニタリング。これらの内容の詳細はわかりませんが、このプログラムでほとんどの人が良くなっているそうです。オプションとして第二プログラムがあり、医師ではない専門家によるサポートプログラムとなっています。