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認知症の予防そして治療

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なぜ認知症になるの!?

脳萎縮の主役は加齢と生活習慣です。最大の危険因子は糖尿病、高血圧、不眠、サルコペニアです。

健康な骨と筋肉 ⇔ 健康な脳 ⇔ 元気な腸内細菌

認知症は経験に基づいたベイズ診断です

認知症は医学の中で遅れた分野です。いまだに確たる診断治療のEBM(エビデンス)はありません。認知症の分類として最も多いのは変性疾患であるアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、パーキンソン病に合併する認知症などです。その他、脳血管性の脳梗塞、脳出血、ビンスワンガー病などがあります。

有名なアルツハイマー型認知症は、高度専門施設以外では確定診断は難しく推定診断です。最近、髄液血液中のタウタンパクやアミロイドβの測定が可能となりましたが、まだ一般化していません。臨床経過からアルツハイマー型認知症としています。

この30年、臨床医学に統計学が導入されました。偶然起きる確率とこれは偶然ではないとする確率p値0.05以下はエビデンスありと判定され、診断治療はEBMエビデンス中心に展開されました。

一般臨床医は難解な統計学に振り回された感があります。ものごとを比較するとき、単変量解析を用いますが、臨床では多変量解析やロジスティック解析した起こりうる確率を用います。認知症らしい人が認知症に移行する確率を予測することは大切です。今から400年近く昔、ベイズが素敵な哲学的理論を発表します。ベイズの定理です。認知症を疑うAさんを物覚えテストを中心に問診していく中で、手に入るさまざまな情報を直感的に瞬時に補正修正し、認知症を予見するのは、まさにベイズ推定です。統計学に無知な私が無意識にベイズの定理を操っているわけです。

つまり認知症の診断は、医師の臨床経験というビッグデータをもとに目の前の患者の予後をベイズ推定によって瞬時に判断するプロセスです。     大田浩右

物忘れが気になるあなた

  • 認知症は50代から、10~20年かけて前触れもなく忍び寄ってきます。男女ともに50代は性ホルモンが減少に入る体調の転換期です
  • 最初の徴候は最近もの忘れが気になる、SCI主観的記憶障害です。
  • SCI主観的記憶障害は加齢による生理的認知力の低下が主体です。SCIを意識し始めたら、生活の中身を変えることが認知症予防の要です。
  • 生理的認知力低下に対処するための生活習慣の改善はMCI軽度認知障害さらにはアルツハイマー病予防の最善策です。
  • 米国では認知症予防に、炭水化物過剰食の弊害、糖化、ホルモン・ミネラルのバランスなど食生活に注目が集まっています。
  • 世界の流れは、「認知症は複数の要因が重なって発症する病気。生活習慣の改善を中心に総合的なアプローチが必要」との考え方です。

最も多いアルツハイマー型認知症のわかりやすい経緯

家族に対し予後を解りやすく図に示したFAST4~7

家族も心配する物忘れ MCI(軽度認知障害)の早期発見

厚生労働省は、65歳以上になると、4人に1人は隠れ認知症MCIがいると警告しています。本人も家族も物忘れを気にしていますが、物覚えテストは正常範囲、社会生活正常な人たち、正常と異常の境界型グレーゾーンの人たちを軽度認知障害MCIと呼ぶことになりました。
MCIの前の段階に生理的認知低下によるSCI主観的記憶障害があります。SCIは50代から始まります。このSCIの段階で認知症予防に取り組めばMCIは回避できます。

MCIは、軽度認知障害と呼ばれ、日常生活動作は正常なのですが、本人のみならず、家族まで、なんとなくおかしいと記憶障害を訴える状態です。MCI軽度認知障害は、隠れ認知症と言われており早期発見・早期介入が大切です。

私は問診・血液検査・画像検査の3点セットでMCI軽度認知障害早期発見に努めています。

 

<参考>

  アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症 前頭側頭型認知症
画像 海馬を中心に脳の広範囲に萎縮が見られる はっきりとした脳の萎縮は
見られないことが多い
前頭側頭葉に萎縮が目立つ
性差 女性に多い やや男性に多い  
初期
症状
物忘れ 幻視妄想、うつ状態、
パーキンソン症状
他人への配慮が出来なくなる
特徴的な症状 物忘れ、取り繕い、物取られ妄想、徘徊 認知の変動、幻視妄想、
うつ、自律神経症状、睡眠時異常行動、パーキンソン症状
ルールが守れなくなる、
周囲の状況に関わらず自分が思った通りの行動をする
経過 徐々に進行する 調子の良い時と悪い時を
繰り返しながら進行する
後頭葉が保たれている初期は日常生活に問題を生じない。
しかし自発性の低下と常同行動が高頻度に見られる。
後頭葉から基底核まで障害が及ぶと急速に症状悪化する。

 

認知症の危険因子       

こんな生活をしていると認知症になりやすい。上から危険度の高い順に記載

  • 運動不足、肥満:脳は骨と筋肉と直結しています。BMI 26以上の肥満、運動不足による骨ホルモン、筋肉ホルモンの減少は脳の機能を鈍らせます。
  • 遅寝、短時間睡眠:午後10時から翌朝3時までの5時間は黄金睡眠ゴールデンタイムと呼ばれる大切な錆落とし時間です。遅寝の人は必要な抗酸化ホルモンの恩恵を受けられないため、脳を含め身体全体錆びたまま次の日を迎えます。このため、自律神経のバランスを崩し体調不全となります。
  • 免疫を下げる薬ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、降圧薬、高コレステロール治療薬(スタチン)、制酸薬(逆流性食道炎の薬)H2ブロッカー・プロトンポンプ阻害薬、抗ヒスタミン薬などは神経細胞の活動を抑えるため認知力の低下につながります。
  • 喫煙、飲酒:特に就寝前の喫煙、飲酒は熟眠感不足を来す睡眠障害の原因です。また、亜鉛、鉄、マグネシウムの不足を来します。
  • イビキ無呼吸:睡眠中のイビキ無呼吸は低酸素状態を引き起こし睡眠中の脳活動にダメージを与えます。アルツハイマー病に向かわせる隠れた殺人者とも言われています。
  • 聴力低下:加齢による会話域の聴力低下は認知機能に影響します。早期発見と対応が大切です。
  • 口腔内不衛生:歯周病などは口腔内の不衛生により発症、増悪します。ジンジバリス菌は脳に侵入し神経細胞を破壊するとも言われています。
  • 慢性の副鼻腔炎・鼻炎:運動不足と睡眠不足の人に多い慢性の副鼻腔炎や鼻炎は細菌だけでなくカビ類によっても起こります。カビ類が産生するマイコトキシンは脳に侵入し神経細胞に害を及ぼします。
  • 繰り返す下痢やしつこい便秘:脳は腸と直結しています。腸内細菌叢腸内フローラは神経細胞の活動に不可欠なセロトニンの前駆体であるトリプトファンをコントロールしています。トリプトファンは必須アミノ酸で食事から摂取するしか方法はありません。腸の健康イコール脳の健康です。
  • 社会的つながりの喪失と孤独:認知症予防に関する大規模調査から、良好な人間関係、社会的なつながりは、薬より有効であるという報告があります。とくに会話は認知機能の維持・改善に重要です。
  • 汗をかかない生活:体内の毒素は肝臓で解毒、腎臓から排出、糞便から排泄の他に汗からも排泄されます。汗には大切な解毒機能があり、認知症予防に大切との報告が多数あります。

 

認知症を予防するためには

運動習慣:日に30分以上大地を歩く
古来から、人は歩くこと、走ることによって脳を発達させ身体の健康を保ってきました。脳は骨・筋肉・脂肪・腸と直結しています。大地を歩くと重力効果により骨と筋肉は鍛えられオステオカルシン、マイオカインなど脳の健康を保つ大切なメッセージ物質が分泌されます。運動は血糖の改善、インスリン抵抗性の改善、糖化を予防しHbA1cを下げます。

空腹のある食生活:
脳にとって空腹は貴重なシグナルです。脂肪細胞から食べるのを止めなさいと指示するレプチン、胃からは食べなさいと指示するグレリンが出ています。意志が弱くストレスがたまったからと甘いものを食べすぎるとレプチン、グレリンのバランスが崩れ肥満になります。特にレプチンはインスリンと並ぶ大切な脳の健康を保つホルモンです。夕食~朝食までの12時間絶食の習慣は大切です。夜間空腹を感じたら飲水か昆布茶などお勧めです。

タンパク質、脂肪、炭水化物のバランス:
現代人は炭水化物の過剰摂取による肥満が増えています。肥満は健康の大敵です。脂肪を摂ると太るという社会認識が広まり炭水化物とタンパク質に偏った食事になりました。魚油、オリーブ油など不飽和脂肪酸を増やし、炭水化物を減らす地中海式食事はケトジェニックに近いものです。

一日8時間睡眠:
日本人の4人に1人が不眠を訴えます。ストレス過剰社会が一因と言われていますが運動不足、肥満も一因です。なかでも高齢者は2人に1人が不眠です。睡眠はアミロイドβを掃除する時間です。高齢者の睡眠マネジメントは認知症予防に大切です。

会話のある生活:
老夫婦になると「あれ、それ、これ」で通じるので、家庭内の会話が減ります。会話は複雑な脳機能をバランスよく使うため、認知機能維持に効果的です。テレビばかり見ている生活ではなく、外に出て、知人との会話、お店の人との会話を心がけましょう。

必要なビタミン補給:
ビタミンは健康維持に必須です。B群、A、C、Dは大切です。ビタミンは活性型がよいのですが日本の医薬品に活性型はありません。最近ビタミンDが注目されています。ビタミンという名前がついていますが実はステロイドホルモンの一種です。骨粗鬆症でよく使用されますが認知症やパーキンソン病などに有効です。ただし、サプリによる摂り過ぎは要注意です。

必要なミネラル補給:
亜鉛欠乏による味覚障害の他に認知機能低下があります。原因としてH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬(8週処方制限あり)など、制酸薬の長期内服による亜鉛吸収障害が指摘されています。一方でサプリによる安易な亜鉛の補給は、ミネラルバランスを崩し危険です。

健康な腸内細菌叢の維持:
脳は腸と直結しています。お互い連絡しながら栄養のバランスを取っています。人の身体全身に細菌が住み着いています。口腔内、鼻腔内、中でも多いのが腸内です。腸内細菌叢フローラが健康になれば、アレルギー、糖尿病、不眠症、記憶障害、気分障害、自閉症からADHDまで改善します。「腸が健康になると病気が治る」と言われています。これらは全て腸内フローラの健康状態によって決まります。最近、認知症の予防治療に便移植療法が注目されています。

聴力低下への対応:
加齢による会話域の聴力低下は早期発見と集音器、補聴器による対応が大切です。

居住空間の清潔、口腔、鼻腔、衣服の清潔:
不潔な空間にカビはつきものです。カビはアレルギーや癌、認知症などの病気の原因にもなります。また、食品のカビ毒は熱しても無害にならないものがあります。清潔なベッド、清潔な衣服、清潔な口腔内と鼻腔は健康の要です。口腔内、鼻腔の簡単な洗浄には重曹水を勧めます。

生活習慣の改善 食事・運動・睡眠・会話・掃除

◆ 食事の習慣 認知症の食事療法  

 脳を筆頭に全ての臓器は食事から作られます。健康な臓器は唯一健康な食事からしか作られません。バランスの良い正しい食生活こそ認知症の予防と治療のカギなのです。炭水化物に偏った食事の是正は認知症の予防と治療にとって大切です。厚労省も脂肪を30%まで増やすよう指導しています。

ケトン療法とは… ケトンは脳の大切な栄養素、脳の栄養はブドウ糖(グリコーゲン)とケトンです。

ケトン療法は、難治性のてんかんの治療法として米国で1920年代に開発された食事療法の一つです。私たちはエネルギー源として食事から炭水化物、タンパク質、脂質を摂取します。現代日本人の一般的な食事は炭水化物60%、タンパク質14.5%、脂質26.5%です。私たちの体は、炭水化物を極端に減らすと、エネルギー源として炭水化物由来のグルコースの代わりに脂質やタンパク質に由来するケトンを使うようになります。現在では、これを応用したケトジェニックダイエットなど、「低糖質食+ケトンに分解されやすい中鎖脂肪酸」の食事療法で、心臓病や糖尿病、認知症や脳腫瘍などの治療・予防効果が期待されています。

 

人類の歴史の99.9%は脂肪を燃やすケトンの時代でした。1万年前、農耕文化が始まって以来、炭水化物が豊富に手に入り、なぜか脂肪は悪者になり、人は肥満の道を歩み続けてきました。グルコース過剰、ケトン不足が起きると子供の発達障害や頭痛、睡眠障害、うつなどの種々の精神症状、高齢者では動作緩慢、認知機能低下などを来します。

◆ 運動の習慣 重力効果で認知症の予防を
リズムウォーキングは大切 ⇒ただ歩くだけではダメ、毎日20~30分のリズムウォーキングは効果的です。

「無重力宇宙」にいる飛行士は10倍のスピードで骨と筋肉が衰えます。

★骨・メッセージ物質
・オステオカルシン 
→ 記憶の増強作用

・オステオカルシン → 生殖力の増強作用
・オステオポンチン → 老化と免疫力低下の抑制作用(抗がん作用)
・スクレロスチン   → 骨量のコントロール作用
2006国際骨免疫学会議始まる。

★筋肉・メッセージ物質
・マイオカインX → 熱の産生、体温維持作用

・カテプシンB → 神経細胞保護、記憶の増強作用
・IL-6 → 免疫暴走の抑制作用
・マイオカインX  笑顔・睡眠ホルモン作用
・マイオカインX → 炎症・動脈硬化抑制作用

 

 

◆ 睡眠の習慣 サビ落としは夜行われる

熟眠感のある納得のいく睡眠は脳を癒やしアミロイドβを排出し海馬を活性化します。
60歳を過ぎると成長ホルモン、メラトニンホルモン共に分泌が低下し、サビを落とす力も低下します。サビ落とし ⇒ 夜10時~3時の5時間を黄金睡眠と呼びます。抗酸化ホルモン・成長ホルモンにより昼間に活性酸素でさびた体のサビ落としを行い⇒免疫力を回復しています。早寝早起きは今も昔も健康の秘訣です。黄金睡眠を大切にしましょう。

記憶は夜作られる

睡眠と記憶は密接な関係にあります。記憶を作る時間は ⇒ 夜の10時~3時 の時間帯、黄金睡眠です。目から、耳から入ってきた情報はまず海馬に保存されます。海馬は前頭葉と協力して必要な情報を選別(LTP)し、不必要な情報や曖昧な情報を消去(LTD)し、記憶として保存します。この一連の記憶を作る作業は深いノンレム睡眠の来る夜10~3時黄金睡眠時間帯に行っています。早く寝る子は賢いと言われる所以です。物忘れは遅寝、短時間睡眠によるものです。

 

<参考資料> 黄金睡眠は健康の要です。

午後10時から午前3時までを黄金睡眠と言います。この時間帯に脳は記憶を作りゴミ出し作業をしています。

黄金睡眠を乱す意外な原因

⇒ 不眠、イビキ無呼吸、ムズムズ脚、レム睡眠行動障害、うつ、肩こり、頭痛、めまい、頻尿、腰痛

睡眠不足に対しては認知機能に影響しない、または影響の少ない薬剤の選択が大切となります。

いずれの処方薬もいわゆる睡眠薬ではないので、処方に際して十分な説明を行い、患者と家族の合意を得て処方します。この説明は大切です。

※クロナゼパムはむずむず脚症候群、レム睡眠行動障害の特効薬です。

 

◆ 会話の習慣 おしゃべり散歩は脳を活性化します

人と対面し会話する時は、脳の機能はフル稼働状態になります。会話は話すだけではなく、表情の変化を伴います。なかでも笑顔は高次脳機能のトップにあると言われています。表情から相手の感情を読み取り、こちらの感情を調整し会話することは、言語・記憶中枢のある側頭葉から前頭前野を刺激し活性化します。認知症の予防にとって側頭葉、頭頂葉の一部そして前頭葉を活性化する会話はとても大切です。会話は脳の一部分を集中して使うのではなく、感情に関係する大脳基底核を含め相手の表情を読み取り適切に反応していくために、脳全体をバランス良く使います。

◆ 脳を掃除する習慣

昼間の活動で脳に溜まったゴミは、神経線維ニューロンと神経線維を支えるグリア細胞の間に浸み込むように流れる脳脊髄液によって静脈に運ばれ、洗浄されます。この洗浄作業は睡眠と運動によって活発になると言われています。特に睡眠中は脳脊髄液の流れが増加し、効率的に洗浄作業が行われます。

 30分以上のウォーキング、7-8時間の睡眠は脳の洗浄力をパワーアップします。

アルツハイマー病患者の脳脊髄液中のアミロイドβ42を測定した(10の研究のメタアナリス)ところ、感度79%、特異度72%で異常値でした。脳脊髄液に流れ出した生ゴミであるアミロイドβは静脈から吸収され脳の外に出されます。したがって、脳脊髄液の循環を良くすることが認知症の予防と治療につながるわけです。

夜になるとアミロイドβ収集車はやってきます。

 

私の認知症治療:カクテル療法

この原稿の執筆中に、FDAがアルツハイマー病治療の新規薬としてアデュカヌマブを条件付きで承認しました。アルツハイマー病の原因となるアミロイドβを分解する画期的な抗体薬です。日本では未承認で薬価も決まっていませんが、最近次々承認されている抗体薬は概して高価です。

私の認知症治療は、複合的な治療を組み合わせたカクテル療法です。下図は概要を示したものです。デール・ブレデセン博士が提唱するリコード法9) を参考にしながら、認知症治療においても重要な良質な睡眠を促す処方体系を試行錯誤しています。

 

認知症治療薬として私が注目している薬

下図に私が注目している薬の一覧を示しました。日本で抗体薬が認可されるようになっても、誰もが使用できるわけではありません。生活習慣、食習慣の改善に加え、従来使用されてきた安全な薬を転用することで良眠できるようになったり、認知症の進行を遅らせることはできると考えています。

高齢者に安心な睡眠薬の代表はメラトニンです。私は厚労省の薬監証明をとって処方しています。効果の個人差が大きいのは難点ですが、加齢によるメラトニンの不足を補える最強の抗酸化物質です。私が昔から使用しているバルプロ酸も神経保護作用が期待できます。炭酸リチウムは未だに作用機序がわからない双極性障害の特効薬ですが、これも少量で海馬の記憶力を維持する効果があります。65歳くらいの前期高齢者の男性には糖尿病予備軍が多く、メトホルミンは糖化を防ぐ薬として、長期的な認知症進行予防に役立ちます。インデラルは脳脊髄液の流れを良くする作用があると期待されます。

 

検査の種類

認知症の検査には、問診検査、血液検査、画像検査があります。本人だけでなく、家族など身近な人に状況を聴く検査もあります。

【対面問診検査】

・モントリオール認知症検査 MoCA

MoCA-J得点数 判 定
30~26点 正 常
25~19点 MCI軽度認知障害
22~19点 日常生活、動作が困難であればMCIではなく認知症と判定
19点未満 認知症

・ミニメンタルステート検査MMSE
MMSE1975年、米国のフォルスタインらが開発した口頭による見当識・記憶力・計算力・言語理解・図形把握など、110秒間で回答する11点方式の1130点満点です。どの位の点数から認知機能低下を疑うのか、医師の経験により多少異なります。健常人は27点以上を取ります。MMSEは感度が低く、アルツハイマー病の早期の変化には不適ですが発症している人には効果的な検査です。

MMSE得点数 判 定
30~27点  正 常
26~24点 MCI軽度認知障害疑い
26~22点 MCI軽度認知障害
23点以下 認知症疑い
20点以下 認知障害あり

・かなひろいテスト

 

【状況評価問診】 

・大友式認知症予測テスト
物忘れの始まり、あるいは認知症のごく初期の状態をご自身や家族などが、簡単に知ることができます。
家族の評価基準は以下の通りです。

0~8点  正常 物忘れも老化現象の範囲内。疲労やストレスによる場合もあります。
8点近かったら、気分の違う時に再チェックを。
9~13点 要注意 家族に再チェックしてもらったり、数ヶ月単位で間隔を置いて再チェックを。
認知症予防策を生活に取り入れてみたらいかがでしょうか。
14~20点 要診断 認知症の初期症状が出ている可能性があります。家族にも再チェックしてもらい、
結果が同じなら、もの忘れ・認知症外来へご相談下さい。

 

【血液検査】

認知症の危険因子、受診者の弱点を調べ、それを是正する大切な治療していきます。危険因子としては、炎症反応高感度CRP、HbA1c、インスリン抵抗性HOMA-R、ホモシステイン、甲状腺機能TSH・FT3・FT4、ビタミンB、葉酸、ビタミンD、亜鉛など。

  • HbA1cは赤血球の糖化の程度を示す大切な指標です。糖化は慢性炎症の原因なので、HbA1c5.5を超えないように食事指導を行い、必要に応じメトホルミンを処方します。
  • 総ホモシステイン:ホモシステイン代謝を円滑にするにはビタミンB6、B9葉酸、B12が必要です。
  • 遊離T4:1.3~1.8ng/dL:甲状腺ホルモンは少量から時間をかけて補充していきます。
  • 遊離T3/リバースT3:この比率は最も重要な甲状腺機能を表す:20以上
  • 亜鉛:インスリンの合成・貯蔵・放出、神経保護作用:100μg/dLが目標。75μg/dL未満は亜鉛不足、亜鉛の補充には時間がかかります。銅とのバランスに注意し急がず慎重に行います。
  • ビタミンB群:個別補充より総合ビタミン剤が望ましい。日本では活性型ビタミンは手に入りません。
  • ビタミンD:カルシウム代謝、糖代謝にとって大切です。

※ビフィズス菌:脳腸相関の主役は腸内細菌です。中でもビフィズス菌はセロトニンを増やすなど認知機能との関係に注目が集まっています。ヨーグルトメーカー各社が機能強化ヨーグルトを開発しています。

 

【骨密度検査】

骨密度と認知機能は高い相関関係にあります。

【骨格筋量指数SMI】

筋肉量と認知機能は高い相関関係にあります。サルコペニアは認知症のハイリスクです。

【聴力検査】

会話域難聴には適切な集音器、補聴器による対応が必要です。

【画像検査】

  • MRI検査 VSRAD advance 解析

MRI検査により記憶中枢と言われている海馬および海馬傍回の萎縮の程度を人工知能AIが解析します。Zスコアと呼ばれています。

 

 

萎縮度 Zスコア値 判定
0度 0~1 萎縮はほとんど見られない
Ⅰ度 1~2 萎縮がやや見られる
Ⅱ度 2~3 萎縮がかなり見られる
Ⅲ度 3以上 萎縮が強い
  • ダットスキャン検査の意味

  • 脳スペクト検査

 

 

高齢者は飲まない方がよい薬

認知機能に影響するコレステロール薬、制酸薬、睡眠薬

処方は医師の裁量権です。親しいかかりつけ医であれば相談にのっていただけると思います。
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 老年医学会編、高齢者が避けるべき薬 国立保健科学院疫学部門
プロトポンプ阻害薬の長期使用はアセチルコリン合成に影響する(カロリンスカ大学2020)

1 高齢者における漫然としたコレステロール薬スタチンの使用は可能なかぎり避けるべきである

コレステロールは細胞活動のエネルギー源です。高齢者の生活は低栄養になりやすく、低コレステロールによる生存率の低下、認知症発症リスクの増加などが指摘されています。中年期の脂質異常症、特に高コレステロール血症はAlzheimer型認知症の危険因子であることが示されており、中年期の脂質異常に対して厳格なコントロールが望ましい。高齢者では血清コレステロール値が高いほどAlzheimer型認知症になりにくいという報告もあり、高齢者へのスタチン投与は慎重を要する。
日本神経学会 認知症疾患診療ガイドライン2017より

日本におけるスタチン製剤

シンバスタチン リポバス
プラバスタチンナトリウム メバロチン
フルバスタチン ローコール
アトルバスタチン リピトール
ピタバスタチンカルシウム リバロ
ピタバスタチンカルシウムOD リバロOD
ロスバスタチン クレストール
ロスバスタチンOD クレストールOD

2 高齢者における制酸剤H2ブロッカーの使用は可能な限り避けるべきである

比較的安全性の高い制酸薬PPIであっても、長期使用は可能な限りさけるべきである

強酸性の胃酸は食物の殺菌による細菌環境の調整、栄養分を分解し吸収しやすい形に変える作用があります。H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(4~8週間処方制限あり)など、薬により胃液の酸度を下げると細菌の繁殖を招き肺炎の原因になります。また腸内フローラを傷つけ腸における消化吸収障害のリスクを高めます。結果としてⅡ型糖尿病のリスクを高めます。(参考文献:Gut. 2020 Sep ;Gutjnl-2020-322557.doi:10.1136/gutjnl-2020-322557.online ahead of print)

亜鉛、鉄、ビタミンの吸収障害、なかでもB12(vitamins japan83-7 2009)の欠乏はホモシステインを増加させ神経障害である認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの進行を助長することが指摘されています。活性型ビタミンD3吸収にも影響し、骨粗鬆症、認知症、各種神経障害の進行を助長すると指摘されています。鉄はFe3+の形で摂取され胃酸やビタミンCなどによりFe2+に還元され吸収しやすい形に変えられます。胃酸の酸度が下がると鉄の吸収障害につながります。その他、微量元素である亜鉛、銅、セレンなどの吸収障害にもつながります。65歳過ぎ、とくに70歳を過ぎたら制酸薬の内服は可能な限り避けるべきです。

 

H2ブロッカー プロトポンプ阻害薬:8週の処方制限あり
シメチジン タガメット オメプラール オメプラゾール
ラニチジン ザンタック オメプラゾン  
ファモチジン チオスター ランソプラゾール タピゾール
ガスター ガスターⅮ タケプロン タケプロンOD
ニザチジン アシノン ラベプラゾール パリエット
ラフチジン プロテカジン ネキシウム タケキャブ

3  高齢者における睡眠薬の使用は可能な限り避けるべきである

睡眠は人の欲望の中でランク1位と言われています。夜間の入眠困難、中途覚醒などの睡眠障害は勉学や仕事など生活の質を落とします。睡眠障害に対する薬は抗アセチルコリン作用、抗ヒスタミン作用、抗α1作用などを持ち、脳活動を抑え睡眠効果を発揮します。したがって70歳以上では認知機能の低下へのリスクがあります。高齢者で認知機能が疑われる場合は、処方前に認知テストを受けていただきます。その結果によってはさらにMRI検査を受けていただき、総合判断の上ベンゾジアゼピン系薬剤の処方の可否について慎重に検討します。

 

終わりに

岡山県西部、広島県東部の福山市に赴任して以来、脳神経外科医として30年、神経内科医に転向して20年の臨床経験から、前期高齢者の睡眠障害と認知症との関係に興味を持ってきました。最近米国発のリコード法に学ぶことが多く、認知症の診断治療に取り入れてきました。脳科学の進歩はめざましく、画像診断や治療法は隔世の感があります。高齢化の進む一方で、飽食と夜型生活になった生活習慣は認知症の増加に関係しているように思います。

時代が変わっても、運動と睡眠が人の健康に必須であることは変わりありません。「憂世を浮世に変えて楽しく生きなきゃ損々」という江戸の小唄になぞらえて、患者には「歩いて寝なきゃ損々」と教えています。

2021年5月 大田浩右

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